事業内容

愛の鳩賞

2024年度「山新放送愛の事業団愛の鳩賞贈呈式」が行われました(2025年2月14日)

地域福祉活動に尽力した1団体1個人をたたえた2024年度愛の鳩賞贈呈式=山形市・山形メディアタワー
愛の鳩賞贈呈式

愛の鳩賞(主催・公益財団法人山新放送愛の事業団、山形新聞、山形放送)の2024年度贈呈式が14日、山形市の山形メディアタワーで行われた。地域福祉の向上を目指して地道な活動を続けてきた山形点訳赤十字奉仕団(山形市)、渡部佐一さん(鶴岡市)の1団体1個人をたたえた。

受賞した1団体1個人は、県民から寄せられた推薦10件の中から選ばれた。山形点訳赤十字奉仕団は、70年以上にわたって一般図書などの点訳を数多く手がけ、視覚障害者の福祉向上に努めている。渡部さんは聴覚を失い苦労した自身の体験を踏まえ、福祉学習や手話教室を通じて障害への理解を深める活動に取り組んでいる。

贈呈式で、愛の事業団理事長の寒河江浩二山形新聞会長・主筆(山形新聞グループ経営会議議長)は「時代のニーズに合わせて工夫を重ね、希望の持てる地域づくりのために長く、地道な活動を続けてこられたことに敬意を表する」などとあいさつした。

続いて、選考委員長の峯田益宏山形新聞取締役編集局長が選考経過を報告した。寒河江理事長が表彰状を、佐藤秀之山形新聞社長が副賞を、板垣正義山形放送社長がレリーフを、それぞれ受賞者に手渡した。

来賓の菅原正春県健康福祉部次長が吉村美栄子知事のメッセージを、鈴木伸治山形市福祉推進部次長兼生活福祉課長が佐藤孝弘市長の祝辞を代読した。受賞者を代表し、同奉仕団の岸道子委員長(74)が「受賞を機に県民が点字に興味を持ち、仲間が増えることを期待する。一冊でも多くの点字本を届けていきたい」と謝辞を述べた。

来賓として他に、中沢秀夫県社会福祉協議会参事、加藤淳一県教育次長、加藤早苗鶴岡市健康福祉部参事兼長寿介護課長が出席した。

「山形新聞2025年2月15日」「写真提供/山形新聞社」

愛の鳩賞 受賞1団体1個人のプロフィル

2024年度「愛の鳩賞」に県内の1団体1個人が選ばれた。

山形点訳赤十字奉仕団(山形市)は、1953(昭和28)年に発足。延べ400人超が一般図書や広報誌など視覚障害者の情報源となる文書の点訳を手がけてきた。視覚障害者の福祉向上に努め、94年に山新3P賞・平和賞を受けた。

鶴岡市の渡部佐一さんは幼児の頃に聴覚障害となり、苦労した自身の経験を踏まえ、88年から障害のことを理解してもらう活動を続けている。手話教室や学校での福祉学習を通じて、誰もが暮らしやすい地域づくりに取り組む。

公益財団法人山新放送愛の事業団と山形新聞、山形放送が主催する「愛の鳩賞」は、地域福祉の向上を目指して地道な努力を続ける個人・団体を80年度から顕彰している。24年度の選考委員会が1月30日に山形市の山形グランドホテルで開かれ、推薦があった10件を審査。活動実績や継続性、将来的な広がりなどを基準に協議した。受賞した1団体1個人を紹介する。

視覚障害者の暮らし支える山形点訳赤十字奉仕団―読みたい思いに応える

活動風景
勉強会などを重ねながら、一般図書などの点訳を手がけている山形点訳赤十字奉仕団の団員ら=山形市

山形点訳赤十字奉仕団は70年以上にわたって、一般図書や情報源となる文書の点訳に取り組んできた。視覚障害者の暮らしを支え、読みたい、知りたいという思いに応えるため、正確さを重視し、こつこつと作業を重ねている。

同奉仕団は1953(昭和28)年、7人の有志により発足した。まだ物資が乏しい時代で、赤十字の傘下に入ることで活動を始めた。現在の団員は県内各地の65人。県立点字図書館から依頼された一般図書のほか、広報誌や取扱説明書など個人から依頼のあった文書の点訳を行う。同図書館と連携し点訳者の人材養成・確保につなげており、実績は点字図書約2万3千冊など計91万3千ページに上る。

1冊の完成には、下読み、読み方などの下調べ、パソコンでの点訳に加え、何度も校正を行い、少なくとも10カ月以上を要する。文章を正しく伝えるためにも全国共通の細かいルールがあり、団員は技術向上のために勉強会や研修会で研さんを積んでいる。作成した点訳書は県内だけでなく、全国で活用されている。

視覚障害者への理解を広げるため、小学校に出向いての点字体験学習も行っている。ICT機器などの普及で「点字離れ」が進むが、「自分のペースで好きな文章を何度も読める」と点訳書を必要とする人はいる。岸道子委員長(74)は「楽しみにしてくれる人がいることが何よりの励み。待っている人がいる限り、先輩が培ってきた活動を続けたい」と話した。

個人で手話の普及に努める渡部佐一さん(鶴岡)―会話を楽しめる社会に

活動風景
手話講座や障害への理解を深める福祉学習に携わる渡部佐一さん(中央)=鶴岡市

「手話で会話ができる社会にしたい」。聴覚障害のある渡部佐一さん(56)=鶴岡市大網=は会社員として働く傍ら、児童らに自身の体験を伝える福祉学習や手話講座で講師を務めている。36年間にわたり個人で地道な活動を続けてきた。

生まれた病院で風疹にかかり、高熱で聴覚を失った。酒田聾(ろう)学校(現酒田特別支援学校)から山添高に進学したが、健常者の中でコミュニケーションに苦労した。そんな中、先輩が手話の存在を教えてくれたという。図書館で専門の本を手に取り、独学で指の動かし方を覚えた。

1988(昭和63)年に始めた市民教室の講師を皮切りに手話の普及に努め、現在は定期的なサークル活動も展開する。聴覚障害は見た目では認識しにくい面があり、渡部さん自身も、他人から物を投げつけられたり、買い物の際に店員から冷たく対応されたりしたことがある。障害への理解を深めてもらいたいという思いが原動力だ。

長女が通っていた小学校からの依頼がきっかけで、福祉学習の講師を務めるようになった。市内の小中高校を訪れ、苦労した体験や障害の特徴、手話によるコミュニケーションの取り方などを伝える。「楽しく会話がしたい」と和やかな雰囲気をつくり、通訳者を通じ、こう呼びかける。「手話は声を出さずに思いを伝え合うことができる。筆談もうれしい。皆さんと一緒に平等な社会で暮らせるように協力をお願いします」

【選考委員】(敬称略)

委員長=峯田益宏(山形新聞社取締役編集局長)▽委員=中沢秀夫(県社会福祉協議会参事)原田智光(高畠)小林宏一郎(白鷹)安藤善宏(村山)今野誠(酒田)日下部泰子(寒河江)鈴木雅史(山形新聞社論説委員長)▽事務局長=鈴木啓祐(山形放送取締役経営管理局長)▽事務局=矢作真也(山形放送総務部専任部長)、大木瞳美(山形放送総務部主任)

選考委員会 2024年度の愛の鳩賞の候補について協議した選考委員会=1月30日、山形市・山形グランドホテル
「山形新聞2025年2月15日」「写真提供/山形新聞社」
鳩マーク