愛の鳩賞[2018年度]
2018年度の「愛の鳩賞」に県内の3団体が選定された。県立保健医療大(山形市)のボランティアサークル「清い翼」は野外キャンプなどを通じて障害児の交流機会の提供などに貢献し、小国高(小国町)は高齢者世帯の除雪ボランティアなど多彩な地域貢献活動を展開。「朗読奉仕団 つゆ草の会」(長井市)は市の広報などを録音し、視覚障害者に音声情報を届けている。
「愛の鳩賞」は公益財団法人山新放送愛の事業団と山形新聞、山形放送が主催し、地域福祉に尽くす個人・団体を顕彰している。18年度の選考委員会が山形市の山形グランドホテルで11月13日に開かれ、推薦があった8件を審査。活動実績や広がり、自主性などを検討した。受賞した3団体の横顔を紹介する。
県立保健医療大ボランティアサークル清い翼(山形)−参加者の笑顔が喜び
笑顔でカヌーのパドルを操る子どもたち。「こんな山に登ることができるんだ」とわが子の姿に涙する母親。障害がある人を対象にした療育キャンプ(2泊3日)の一こまだ。県立保健医療大の学生が、普段できない体験をしてもらおうと奮闘している。
ボランティアサークル「清い翼」は、重症心身障害児・者が屋外活動を経験することの必要性を感じた学生の発案で1999年に発足した。本年度の会員は124人。活動の軸であるダウン症や自閉症の人が対象の「わくわくキャンプ」と、重症心身障害児らが参加する「にこにこキャンプ」は毎年8月、西川町と連携し、同町本道寺地区で開催している。
「わくわく−」はトレッキングやカヌーなどに挑戦する。「参加者の笑顔を見られるのがうれしい」とメンバーの池田亜梨寿(ありす)さん(22)。準備は入念だ。期間中は参加者1人と学生1〜3人がグループを組むが、組み合わせも重要。「事前に情報交換し、一人一人の特徴を理解した上で考える」と佐竹真奈さん(22)は説明する。「にこにこ−」は家族が一緒に参加する。学生が学ぶことも多く、水戸部唯さん(21)は「家族を含めて支援することの大切さを学んだ」。この経験を看護職に就いても生かすつもりだ。
前代表の加藤緩奈(かんな)さん(22)は「1人でやろうとせず、協力して取り組むことが、参加者の笑顔につながる」と後輩たちにエールを送る。
小国高−除雪や清掃、活動多彩
小国町の小国高(柿崎悦子校長、81人)のボランティア活動は実に多彩だ。1986(昭和61)年から続けている町民プール清掃をはじめ、今年の取り組み内容は27種類に及ぶ。
小規模校を強みにし、全校生徒が連携している。部活動単位や有志グループ、時には全員で。若い力で地域を支えようと、活動内容に応じてメンバーが入れ代わる。高齢者宅の除雪作業や地域のバリアフリーマップ作成支援、十三峠敷居道や河川の清掃ボランティア、国道113号沿いの植栽活動などに汗を流す。
町内の高齢者福祉施設で利用者と会話を楽しむ「傾聴ボランティア」に参加した1年舟山未羽さん(16)は「(利用者が)笑顔になってくれたのが印象に残っている」。2年舟山優奈さん(17)は海外留学経験を生かし、同町のすみれ保育園で園児対象の英会話レッスンを企画し「喜んでくれてうれしかった。他の園でも取り組みたい」と熱意をたぎらせる。
単なるボランティアにとどまらず、2006年からは授業の一環で地域貢献活動に力を入れる。町産のヤマウコギを使ったスイーツ開発や小国の魅力発信マガジン「Oguu」刊行も手掛ける。今年8月には、高校生の視点で地域活性化策を話し合う全国小規模高サミットを地元で開催した。
地域に支えられている高校との意識が、生徒の積極的な姿勢につながっている。柿崎校長は「これからも活躍の幅を広げてほしい」と期待を込める。
朗読奉仕団つゆ草の会(長井)−市報を声で届け40年
地域の情報を「声」で届けて40年−。長井市の「朗読奉仕団 つゆ草の会」は、視覚障害者向けに市発行の広報紙を朗読、録音する活動を続けている。農業者や主婦、教員らのメンバーは「(愛の鳩賞の)受賞を機に会員同士の絆をさらに深め、次世代に活動をつないでいきたい」と話す。
もともとは市の女性職員有志が始めた取り組み。1980(昭和55)年ごろに看護師や会社員、JA職員らのサークル仲間が引き継いだ。現在は20〜60代の10人が所属する。
活動拠点は市老人福祉センターで、毎月1日と15日に発行される「広報ながい」などの記事を分担して読み上げ、ICレコーダーに録音。データをCDやカセットテープに移し、市社会福祉協議会を通じて希望者6人に郵送する。
1日号は24ページ前後。写真の絵解き文やグラフも丁寧に説明し、録音時間は平均120分に上る。読む速さに気を配る一方、言葉のなまりは気にしない。冒頭には季節のあいさつなど自由にひと言を加える。
会員が少ない時期もあったが、農業の傍らで続ける遠藤重夫会長(63)=同市勧進代=は「生活の一部として楽しんでいる」と話す。事務局は会員向けの「つゆ草通信」を定期的に発行し、連帯感を保つ。2004年からは中高生向けの朗読体験会を開き、視覚障害者の存在や活動の周知に努めている。遠藤会長は「朗読は若い人になかなか縁がないが、興味を持ってもらえたら」と話す。