愛の鳩賞
2021年度「愛の鳩賞贈呈式」が行われました
地域福祉活動に尽力した3団体をたたえた2021年度愛の鳩賞贈呈式=山形市・山形メディアタワー
愛の鳩賞(主催・公益財団法人山新放送愛の事業団、山形新聞、山形放送)の2021年度贈呈式が20日、山形市の山形メディアタワーで行われた。地域福祉・ボランティア活動などを地道に続けてきた、認定NPO法人発達支援研究センター(山形市)、一般社団法人やまがた福わたし(山形市)、西遊佐地区まちづくりの会(遊佐町)の3団体をたたえた。
2021年度「愛の鳩賞」に県内の3団体が選ばれた。認定NPO法人発達支援研究センター(山形市)は、発達障害やひきこもりに悩む人などを継続的にサポートしている。一般社団法人やまがた福わたし(同)は、生活に困窮する人たちに一般家庭や企業から譲り受けた食品などを提供する活動を展開。西遊佐地区まちづくりの会(遊佐町)は、生活に不安を抱える高齢者にサポーターを派遣し、日常の困り事に幅広く対応している。
公益財団法人山新放送愛の事業団と山形新聞、山形放送が主催する「愛の鳩賞」は、地域福祉の向上を目指して地道な努力を続ける個人・団体を1980年度から顕彰している。2021年度の選考委員会が11月12日に山形市の山形グランドホテルで開かれ、推薦があった8件を審査。実績や自主性、活動が定着しているかなどを基準に協議した。受賞した3団体を紹介する。
発達支援研究センター(山形)−支え合う、地域づくり
山形市の認定NPO法人発達支援研究センター(細谷暁子代表)は、発達障害やひきこもりに悩む人たちを支えようと2002年に設立。「共に生きよう! 支えあって」をスローガンに、幼児から成人まで年代や状況に合わせて生涯にわたりサポートしている。
現在は3カ所を拠点に職員49人、ボランティア10人で活動する。発達障害の子どもや子育てに不安のある親を対象にした「ワクワク相談支援事業所」「ワクワクひろば」「ワクワクひろば泉」▽生きづらさを抱える人向けにカウンセリングを行う「心理生活相談室」▽不登校やひきこもりの居場所となる「フリースペース雨やどり」「若者相談支援拠点」▽若者や生活困窮者らの就労を後押しする「きら夢」「やまがた若者サポートステーション」「こみっと・ぷわっと」−の9事業を実施。村山地域を中心に2歳〜50代の約500人が利用している。
「勉強ができ学校生活はこなせたが、仕事でチームワークを求められると、うまくコミュニケーションがとれないなど、大人になって初めて発達障害と分かる人もいる。子どもの支援から始めたが、ニーズに合わせて継続的に対応するうちに広がっていった」と細谷代表(50)。「発達障害は生まれながらの脳の障害。自身の症状を理解し、配慮をお願いするなど環境を整えることで普通に生活できる。誰でも得手不得手がある。支え合う地域づくりを目指し、柔軟に活動していきたい」と語った。
やまがた福わたし(山形)−お裾分け、人つないで
一般家庭や企業で消費されなかった食品などを譲り受け、生活に困っている人たちに提供するフードバンク活動に取り組む山形市の一般社団法人やまがた福わたし(伊藤智英代表理事)。「次世代にお裾分けをつないでいきたい」との理念で、橋渡し役は物品の提供だけにとどまらない。さまざまな団体や人とつながり、現場に寄り添ったサポートを行っている。
2016年に設立した。寄せられた食品や生活用品を会員が丁寧に仕分けし、社会福祉協議会やNPOなどを通じて生活困窮者に提供している。年間110世帯前後の困窮世帯などに、これまで計31トンを支援した。昨年度からは新型コロナウイルスの影響で収入が減るなどした世帯への緊急支援として、食料品の詰め合わせを送るプロジェクトも実施。支援先は県内全域に広がっている。
支援を必要とする人たちが抱える悩みは、食料支援だけで解決できるものではない。そこで本年度から各地域に根差した団体と連携し、対面形式で配布する「フードパントリー」を庄内と最上で始めた。訪れた人から孤立や子育てなどの悩みを直接すくい上げ、支援制度などにつなげている。現場では思いがけず来所者同士の横のつながりも生まれた。伊藤代表理事(53)は「付き合いが希薄な時代だからこそ、お裾分けや人をつなぐ橋渡しの役割が求められている」とした上で、「さらにネットワークを広げ、困っている人に必要な支援を届けたい」と話した。
西遊佐地区まちづくりの会(遊佐)−暮らし困り事を手助け
困った時はお互い様−。遊佐町の西遊佐地区まちづくりの会(伊藤新一会長)は、高齢者の生活を支援する「エプロンサービス」を展開している。地区のお年寄りから家事や草刈り、雪かきなどの依頼を受け、サポーターを派遣。地域全体で高齢者を支える仕組みを構築している。
西遊佐地区は同町沿岸部にある約520世帯からなり、2004年に自治組織として同会を設立。住民同士が交流を図る場をつくろうと、カフェや運動会などを企画してきた。少子高齢化が進み、日常生活に不便を感じるお年寄りが増える中、支え合う地域づくりを進めようと、17年にエプロンサービスを開始した。
現在は40〜80代の住民58人がサポーターを担い、利用を希望する36人がサービスに登録。スタッフは依頼が入ると、高齢者宅を訪問して状況を聞き取りサポーターを派遣する。食事作りや網戸の張り替え、庭の手入れ、買い物の同行、悩み相談など。30分当たり150円で、日常生活のちょっとした困り事に幅広く対応しており、これまで約500件の依頼に応えた。
サポーターの優しさに触れ、利用後に支える側になる人も多い。佐藤豊昭さん(79)もその一人。病気の療養中に料理を作ってもらうなどし「心の支えになった。助け合いの輪が広がるのが魅力」と語る。伊藤会長(74)は「少子高齢化を踏まえ、どうやって地域を維持していくか。みんなで話し合いながら探っていきたい」と話した。