事業内容

愛の鳩賞

2023年度「愛の鳩賞」贈呈式が行われました

地域福祉活動に尽力した3団体をたたえた2023年度愛の鳩賞贈呈式=山形市・山形メディアタワー
愛の鳩賞贈呈式

愛の鳩賞(主催・公益財団法人山新放送愛の事業団、山形新聞、山形放送)の2023年度贈呈式が18日、山形市の山形メディアタワーで行われた。地域福祉の向上を目指し地道に活動してきた、鶴岡東高奉仕部(鶴岡市)▽点訳の会さくら(寒河江市)▽家庭教育応援・ボランティア活動団体アベルんち(新庄市)−の3団体をたたえた。

受賞した3団体は、県民から寄せられた推薦7件の中から選ばれた。鶴岡東高奉仕部は高齢者らとの交流や清掃など時代に合わせて地域に根差した活動を展開。点訳の会さくらは寒河江市報や児童書を点訳し、視覚障害者の生活を支えている。アベルんちは読み聞かせや農業体験などを通じ、生きづらさを抱える人の居場所になっている。

贈呈式で、愛の事業団理事長の寒河江浩二山形新聞会長・主筆(山形新聞グループ経営会議議長)が「さまざまな工夫を重ね、共に支え合い希望の持てる地域づくりのため、長く活動を続けてきたことに改めて深く感謝の意を表する。一層の活躍を祈念する」などとあいさつした。選考委員長の峯田益宏山形新聞取締役編集局長が選考経過を報告。寒河江理事長が表彰状、佐藤秀之山形新聞社長が副賞、板垣正義山形放送社長がレリーフを、それぞれ受賞者に手渡した。

来賓の堀井洋幸県健康福祉部長が吉村美栄子知事の祝辞を代読。受賞者を代表し、点訳の会さくらの佐藤ひろみ会長が「こつこつと地道に取り組んできたことが認められたようでうれしい。賞を励みに何ができるかを考え、発展させ、会の将来へつなげていきたい」と謝辞を述べた。

(山形新聞2023年12月19日)

愛の鳩賞 受賞3団体のプロフィル

2023年度「愛の鳩賞」に県内の3団体が選ばれた。鶴岡東高奉仕部(鶴岡市)は、鶴岡商業高時代の1975(昭和50)年に創部。鶴商学園高、鶴岡東高と校名が変わる中、半世紀近くにわたり地域に根差した活動を続けている。点訳の会さくら(寒河江市)は2013年に結成。市報や児童書を点字にし、視覚障害者の暮らしを支えている。障害への理解を深めるため、小学校で出前授業なども行っている。アベルんち(新庄市)は人や家庭、地域が元気になるよう多彩な活動を展開。お薦めの本を紹介し合ったり、農作業や運動をしたり、生きづらさを抱える人たちの居場所になっている。

公益財団法人山新放送愛の事業団と山形新聞、山形放送が主催する「愛の鳩賞」は、地域福祉の向上を目指して地道な努力を続ける個人・団体を1980年度から顕彰している。23年度の選考委員会が11月22日に山形市の山形グランドホテルで開かれ、推薦があった7件を審査。実績や自主性、活動が定着しているかなどを基準に協議した。受賞した3団体を紹介する。

鶴岡東高奉仕部(鶴岡)−地域に根差し社会貢献

活動風景
児童館の花壇整備を行う鶴岡東高奉仕部メンバー=5月、鶴岡市(同校提供)

鶴岡市の鶴岡東高奉仕部は、地域でボランティア活動を続け、もう50年近くとなる。建学の精神と同じ「常に時代の先導者たれ」を目標に掲げ、さまざまな団体や人とのつながりを大切にしている。

創部は鶴岡商業高時代の1975(昭和50)年にさかのぼる。「ボランティア元年」と呼ばれる95年より20年も前に活動を始めた。当時の文書によると、公衆電話ボックスの清掃などが活動の中心だった。時を経て鶴商学園高、鶴岡東高と校名が変わっても、伝統は引き継がれている。

現在は3年生5人が部活動を引退し、1、2年生の計16人が在籍する。青少年赤十字クラブ、ロータリークラブのインターアクトクラブ、国際ソロプチミストのSクラブにそれぞれ登録。週1回ペースで定例会を開き、各団体からの依頼などを受け、幅広い活動を展開している。2023年は児童館の花壇整備をはじめ、薬物乱用防止キャンペーンや清掃などに取り組み、SDGs(持続可能な開発目標)について理解を深める機会も設けた。

地域と接点を持つことを重視しており、副部長の2年渡辺彩奈さん(17)は「ボランティアといっても、困っている人の手助けというイメージではなく、社会との交流を楽しんでいる」と話す。今冬も除雪活動などを予定しており、部長の2年高宮あづ葉さん(17)は「地域社会に貢献することに誇りを持ち、これからも活動を続けていきたい」と力を込めた。

点訳の会さくら(寒河江)−文字情報、視覚障害者に

活動風景
市報や本の内容を点字にし、視覚障害者の支援に取り組んでいる点訳の会さくら=寒河江市ハートフルセンター

点訳の会さくらは寒河江市を拠点に、文字を点字にする点訳に取り組んでいる。毎月2回発行されている市報の内容を点字にし、同市ハートフルセンターで利用できるようにしているほか、県立山形盲学校(上山市)に点訳した児童書を寄贈し、視覚障害者の暮らしを陰から支えている。

前身は、1987(昭和62)年に寒河江市のボランティア講座修了者がつくった点訳と読み聞かせの活動グループ。そこから点字班が独立し2013年に点訳の会さくらを結成した。会員は19〜93歳の12人。主に自宅で作業を行うが、同センターに毎月2回集まり、校正や、分からないところを聞き合うなどしている。

点字は縦3点、横2列からなる六つの点の組み合わせで、五十音や数字、楽譜などが表記できる。会員たちは、点字器に用紙を挟んで点筆で打ったり、専用のパソコンソフトやプリンターを使って点訳を行う。県立山形盲学校への点訳図書の寄贈は、年間約50タイトルにも上る。佐藤ひろみ会長(65)は「本の世界を健常者と同じように楽しんでもらいたい」と思いを語る。

小学校での出前授業や、同市社会福祉協議会が主催する夏休みボランティア体験での指導を通し、視覚障害者に対する子どもたちの理解を深める役割も担う。「若者が興味のあるジャンルなど点訳する対象を広げるためにも、若い世代の人に加わってほしい」と佐藤会長。障害者が、幅広い情報をより早く得られる環境の実現を目指している。

アベルんち(新庄)−体験通し居場所づくり

活動風景
お薦めの絵本を紹介し合う「アベルんち」のメンバー=新庄市民プラザ

新庄市のアベルんちは読み聞かせや農業体験、消しゴムはんこなどのハンドメードワークショップといった幅広い「楽しいこと」を通し、不登校や障害などで悩める子どもや親の居場所づくりに取り組む。「お母さんが元気になると家庭も地域も元気になる」との思いを胸に活動している。

最上地域で読み聞かせを行う人々が「楽しいことをしよう」と声をかけ合い、集まった賛同者らと2013年に結成した。中心となるメンバーは女性5人ほど。当初は絵本を通した活動が中心で、徐々に幅を広げていった。

月に1回開くのが、お薦めの絵本を持ち寄る「絵本de茶話会」。数人から10人ほどが集まり、参加者が絵本を紹介し、和やかな雰囲気で「小さい子が好きそう」「歌いながら読めるのがいいね」と感想を話す。自閉症の娘の子育てを機に参加するようになった佐藤洋美さん(53)は「困っていることを忘れるくらい楽しい場。育児を楽しむヒントをもらえた」と話す。

他に、悩みを抱える子どもや親が語り合う「リースの会」、農作業を楽しむ「畑のハンモック」などを企画し、数人から15人ほどが集う。こうしてさまざまな居場所をつくる。参加者は最上地域からが中心だ。

やりたいことを否定せず、どうすれば実現できるかを考えながら取り組む姿勢が基本にある。佐藤成美代表(67)は「生きづらさを抱える子どもやお母さんが肩の荷を降ろせる場にしたい」と変わらぬ思いを語った。

【選考委員】(敬称略、新は新任)

委員長=峯田益宏(山形新聞社取締役編集局長)▽委員=鈴木由美子(県地域福祉推進課長、新)島貫克彦(県生涯教育・学習振興課長兼郷土愛育成室長)中沢秀夫(県社会福祉協議会参事)押切あき子(新庄)原田智光(高畠)小林宏一郎(白鷹)安藤善宏(村山)今野誠(酒田)日下部泰子(寒河江)細谷由紀(東根)菅原繁(鶴岡、新)鈴木雅史(山形新聞社論説委員長、新)三浦重行(山形放送報道制作局長)▽事務局長=高橋慎一郎(山形放送総務局長兼経営管理局長)、事務局員=矢作真也(山形放送総務部)

選考委員会 2023年度愛の鳩賞の候補について協議した選考委員会=11月22日、山形市・山形グランドホテル
(山形新聞2023年12月12日)
鳩マーク