事業内容

愛の鳩賞[平成27年度]

(2015年12月4日 山形新聞)

2015年度の「愛の鳩賞」に県内の2団体1個人が輝いた。

高校生ボランティアサークル「ふなっ子」(舟形町)は町内の子どもたちとの交流活動や、高齢者・障害者福祉施設でのボランティアに力を入れている。日本ALS(筋萎縮性側索硬化症)協会県支部(山形市)は、患者や家族が医療従事者と共に、病気への理解拡大や患者家族の負担軽減に取り組んできた。飯野美世枝さん(三川町)は、NPO法人はんどめいど糸蔵楽(いとくら)理事長を務め、知的障害者に就労機会や住民との交流の場を提供し、障害者の社会参加の支援に尽力してきた。

「愛の鳩賞」は財団法人山新放送愛の事業団と、山形新聞、山形放送が主催し、地域福祉に尽くす個人・団体を顕彰している。本年度の選考委員会は11月17日、山形グランドホテル(山形市)で開かれ、推薦があった11件を審査。活動実績や広がり、自主性などを検討した。受賞者・団体のプロフィルを紹介する。

NPO法人「はんどめいど糸蔵楽」(三川)理事長 飯野美世枝さん−障害者の社会参加、後押し

活動風景
笑顔で接する飯野美世枝さん=三川町・はんどめいど糸蔵楽

三川町のNPO法人「はんどめいど糸蔵楽(いとくら)」理事長の飯野美世枝さん(82)=同町横山=は、主に知的障害者を支援する作業所を17年間運営している。手織りや食品包装といった就労機会の提供、地域との交流の場づくりに尽力。利用者の社会参加を優しいまなざしで後押しする。

農業の傍ら織物を40年以上続けてきた飯野さん。多くの人に支えられてきたことへの感謝を込め、老後は恩返しをしようと思いながら働いてきた。そんなある日、障害者に織物を教えて自立を支援する女性の存在をラジオで知った。

「お告げのようだった」と振り返る飯野さんは、早速、大阪にある女性の支援施設を視察。「織物はリハビリにいい」と助言を受け、1998年に自宅敷地内にある土蔵で、手織りを教える任意団体「糸蔵楽」の活動を始めた。

2003年には町施設を借りて移転し、07年にNPO法人に移行。現在は庄内一円から11人が通い、手作りパンや菓子の包装にも取り組む。製品は年3回の展示会で販売。ボランティアによる音楽教室や交流会も毎週開かれる。「保護者や地域の人が温かく見守ってくれ、積極的に助言をくれる。一番支えられているのは私」と控えめに話す。

母親のような優しい笑顔で利用者に語りかける飯野さん。個性を尊重し、長所を伸ばすことがモットーだとし「利用者が楽しいと思える環境づくりが大切。今後もできる限りの恩返しを続けたい」とほほ笑んだ。

ボランティアサークル「ふなっ子」(舟形)−高校生、明るく読み聞かせ

活動風景
舟形小の図書館を夜に開放するイベント「夕涼み読書会」で読み聞かせをする「ふなっ子」のメンバー=今年7月、舟形町

舟形町のボランティアサークル「ふなっ子」は1981(昭和56)年の発足以来、町内の小学校での読み聞かせや福祉施設でのイベント補助などの活動を続けてきた。高校生たちが楽しみながら取り組む姿は、町民にも愛されてきた。

現在のメンバーは町内在住の高校生13人。活動は週末や長期休暇が主で、月に1回、定例会を開く。これまで、地元の保育園や高齢者福祉施設の慰問、毎年8月に開かれる「『縄文の女神』里帰り展」の運営補助などを行ってきた。

舟形小の恒例行事である夜間の図書館開放「夕涼み読書会」には、読み聞かせスタッフとして参加している。地域の子どもたちのために大型の絵本を読んだり、簡単な工作を教えたり。大場裕太代表(15)=新庄南高1年=は「子どもたちの笑顔を見られるのが何よりうれしい」と語る。

前代表の同校3年佐藤愛佳さん(18)は、ふなっ子での活動を機に、福祉関係の大学に進学することを決めた。「活動のおかげで町を身近に感じることができた。卒業したら舟形に戻ってきたい」と話す。後輩には「受け身の活動ではなく、やりたいことを自分たちで企画し、チャレンジしてほしい」と期待を込める。

3年生が卒業するとメンバーが半減してしまうのが、目下の悩み。同校1年の伊藤美空副代表(15)は「普段の活動に加えて、会員を増やすことにも力を入れたい」と意欲を燃やしている。

日本ALS協会県支部(山形)−闘病の患者ら、親身に支え

活動風景
支部の歩みを振り返る(左から)川越隼雄事務局長、行方幸雄支部長と妻の優美さん=山形市

難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者や家族、医療従事者らでつくる日本ALS協会県支部は今年で設立20周年。近年、患者支援を目的に氷水をかぶる「アイス・バケツ・チャレンジ」で注目を集めたALSだが、同支部は病気の認知度が低い時期から、国への陳情や情報交換の場の設定を通し、患者とその家族の支えとなってきた。

ALSは神経が侵され、全身の筋肉が動かなくなる難病。進行すると全身がまひし、呼吸困難になる。原因不明で有効な治療法は確立されていない。10万人に4〜6人の割合で発症するとされ、支部によると、県内には10月末現在120人の患者がいる。同支部は1995年の設立で、現在会員数は約420人。在宅療養の負担を減らすための支援や、情報交換の場である「井戸端会議」の開催、患者の外出サポート、災害時の搬送体制構築などに取り組んできた。

現支部長の行方幸雄さん(67)=山形市瀬波1丁目=は2006年にALSを告知された。手足などは自力で動かすことができるが、人工呼吸器を装着し在宅療養している。「支部があることで同じ病気の人が頑張っている姿が分かり、自分たちだけではない、という気持ちになれる」と妻の優美さん(64)。事務局長の川越隼雄さん(80)=同市あこや町1丁目=は親友がALSを発症したのがきっかけで、草創期から支部運営を支えてきた。「患者、家族の意見を吸い上げ、要求に変えていく。安心して闘病できる態勢をつくりたい」と川越さん。優美さんは「治療法が見つかることが一番。それまで患者や家族の支えになるような協会であれば」と思いを語った。

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