事業内容

愛の鳩賞[平成29年度]

(2017年12月7日 山形新聞)

2017年度の「愛の鳩賞」に県内の2団体1個人が輝いた。

新庄南高図書委員会(新庄市)は本の読み聞かせボランティアを続け、鶴岡点字サークル(鶴岡市)は点訳による視覚障害者のコミュニケーション支援に貢献している。また、清水マサ子さん(山形市)は県視覚障害者福祉協会の事務局を務めながら、ガイドヘルパーとして視覚障害者の社会参加を手助けしている。

「愛の鳩賞」は公益財団法人山新放送愛の事業団と、山形新聞、山形放送が主催し、地域福祉に尽くす個人・団体を顕彰している。本年度の選考委員会は11月15日、山形市の山形グランドホテルで開かれ、推薦があった10件を審査。活動実績や広がり、自主性などを検討した。受賞者・団体のプロフィルを紹介する。

NPO法人県視覚障害者福祉協会事務局・清水マサ子さん(山形)−ガイドヘルパー40年超

活動風景
40年以上、ガイドヘルパーとして活動している清水マサ子さん=山形市・NPO法人県視覚障害者福祉協会

NPO法人県視覚障害者福祉協会の事務局を務める清水マサ子さん(74)=山形市下椹沢=は、ガイドヘルパーとして40年以上、視覚障害者の外出を支援してきた。

若いころ、山形市の叔母の家から理容学校に通った。叔母は全盲で買い物や通院などを手助けし喜ばれた。理容学校では知的障害がある子どもの髪をカットするボランティアに取り組んだ。こわばった表情の男の子が何度目かの訪問の時にニコッと笑った。「あの笑顔が忘れられない」。二つの体験が活動の原点だ。

より多くの人の役に立ちたいと、1975(昭和50)年にガイドヘルパーの資格を取った。市に登録し、要請に応じて外出に同行する。20年以上前、生まれつき目が見えない男の子と出会った。生後数カ月から特別支援学校時代まで生活をサポートした。「清水ヘルパーがいたからここまで来られた」。卒業式の日、男の子から贈られた言葉に「涙をこらえられなかった」。

2011年に「同行援護制度」ができてから依頼は減っているが、ニーズがなくなったわけではない。特に大勢の障害者に付き添う際は、衝突や転落の事故に細心の注意を払い、食事の世話は忙しい。同協会事務局に就いたのは15年ほど前。ほかに特別支援学校に通う子どもらの送迎も担う。清水さんは「見返りを期待していてはやれない。自分がしたいから続けているだけ」と笑い、「活動を許してくれる夫や家族に感謝したい」と語った。

鶴岡点字サークル(鶴岡)−点訳や墨字を積極的に

活動風景
点訳練習で使う資料の校正作業を行うメンバー=鶴岡市・ゆうあいプラザかたぐるま

鶴岡市の鶴岡点字サークル(阿部玲子代表)は、文字を点字にする「点訳」と、点字を文字に訳す「墨字」の奉仕活動を行っている。発足以来、約30年にわたり、視覚障害者のコミュニケーション支援に貢献し、障害のある人もない人も共に生きる社会づくりの一翼を担ってきた。

点字は縦3点、横2列からなる六つの点の組み合わせで、五十音や数字、楽譜などが表記できる。視覚障害者にとって情報を得る重要な手段で、六つの点を使うのは世界共通だ。日本で使われている点字は石川倉治が確立した。

鶴岡点字サークルは、同市社会福祉協議会主催のボランティアスクール「点字教室」の受講修了者が、1988(昭和63)年に設立した。県立点字図書館の元職員で現会員の神林幸さん(70)=同市大山2丁目=から指導を受けながら、技術向上に努めてきた。

現在の会員数は15人で、同市の障害者支援施設「ゆうあいプラザかたぐるま」で毎月第2、第4水曜日に定例学習会を開催。各種団体の総会資料やイベントパンフレットを点訳したり、視覚障害者からの依頼に応えたりしている。小中学校での体験学習にも積極的に協力し、児童や生徒が福祉の心を育てる活動をサポートしている。

代表の阿部さん(70)=同市大山1丁目=は「家族の理解と協力があるからこそ取り組みを継続できた。受賞によって点字、障害者への理解が深まればうれしい」と話していた。

新庄南高図書委員会(新庄)−読み聞かせ、魅力伝える

活動風景
読み聞かせの練習に励む委員会のメンバー=新庄市・新庄南高

新庄市の新庄南高図書委員会は市立図書館の定期イベント「おはなし会」の運営を長年担当し、絵本や紙芝居の読み聞かせを通じて子どもたちに本の魅力を伝えている。さまざまな催しに積極的に参加し、地域に「読書の輪」を広げている。

2006年に市立図書館のボランティア団体として活動をスタートした。東日本大震災の発生後は県内外の復興支援イベントに足を運び、11年には第7回読み聞かせボランティア大賞の学生の部で大賞(文部科学大臣賞)に輝いた。現在の所属メンバーは22人で、部活動や勉強の合間を縫い、イベントの約2週間前から練習を重ねる。

本の魅力を十分伝えられるよう、登場人物になりきって大きい声で話し、聞き手とアイコンタクトを取ることを心掛ける。歌や踊りを交えたパネルシアターを行うなど、読み聞かせの内容にも工夫を凝らし、子どもだけでなく多くの地域住民にも親しまれている。1年鈴木友樹さん(16)は「子どもたちの喜ぶ顔が一番うれしい。『また来てね』という言葉も励みになる」とやりがいを語る。

昨年は国際ソロプチミスト新庄の資金援助プログラム「Sクラブ」に入会し、活動の幅をさらに広げている。委員長の2年後藤佳澄さん(17)は「長年活動を続けてきたことが評価されうれしい。子どもたちに本に親しみを感じてもらえるよう、積極的に活動していきたい」と話していた。

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