愛の鳩賞
2020年度「愛の鳩賞贈呈式」が行われました
地域福祉・ボランティア活動に尽力した1団体1組をたたえた2020年度愛の鳩賞贈呈式=山形市・山形メディアタワー
公益財団法人山新放送愛の事業団と山形新聞、山形放送が主催する「愛の鳩賞」は、地域福祉の向上を目指して地道な努力を続ける団体・個人を顕彰している。
2020年度贈呈式が14日、山形市の山形メディアタワーで行われた。地域福祉・ボランティア活動などを地道に続けてきた「舟形町読み聞かせボランティア連絡協議会」(舟形町)と、武久明雄さん利江子さん夫妻(鶴岡市)の1団体1組をたたえた。
受賞した1団体1組を紹介する。
武久明雄さん、利江子さん夫妻(鶴岡)−二人三脚で「障害」伝える
「子どもたちの生きた教材になりたい」。脳幹出血で重度の障害がある鶴岡市早田の武久明雄さん(61)は、妻の利江子さん(61)とともに市内の小中学校や幼児施設などで「心の授業」を行い、思いやりや困難に負けない心、夢を持つことの大切さを呼び掛けてきた。新型コロナウイルスの影響で施設に直接赴く活動は休止中だが、「オンラインによる交流も今後進めたい」と意欲を見せる。
明雄さんは2003年9月、釣りに行った秋田県大館市で倒れた。命は助かったが、全身まひなどの症状が残った。利江子さんの介護でリハビリ生活を続け、かすかに動く左手でパソコンを扱えるようになった。
「社会に置いていかれた疎外感の中、何が自分にできるかを考えた」と明雄さん。その答えが、障害者としての自分を見せることだった。05年から会員制交流サイト(SNS)での発信、本の出版などに取り組み、ありのままを伝えた。活動で知り合った人たちの協力を得て、自身がモデルの紙芝居「あるけなくなったくまさん」を作り、児童館などで上演。市社会福祉協議会が小中学校と連携して行う福祉学習のゲストティーチャーとして、力強く優しいエールを送った。
明雄さんは「子どもたちに『かわいそう』と思う気持ちが生まれることが大切。いじめを見たら止めに入り、命を救う行動につながる」と、福祉の心を育てる意味を語る。紙芝居を読んだり、明雄さんにマイクを向けたりとそばで支える利江子さんは「活動が夫の生きがいにつながれば、という思いで取り組んできた。行く先々で元気をもらい、自分の喜びにもなっている」と話した。
「障害者でもできること」でなく「障害者だからできること」。それが夫婦のモットーになっている。
舟形町読み聞かせボランティア連絡協議会−活動通し、異世代が交流
舟形町読み聞かせボランティア連絡協議会は、30代女性から70代男性までの三十数人が読み聞かせ活動を通して交流を深めている。地域の子どもたちの健やかな成長を願う取り組みは、会員それぞれが積極的に地域づくりに関わり、活躍の場を広げるとともに世代間の新たなつながりを生み出す。
町内の保育園、小中学校で読み聞かせ活動を主に展開する。小中学校は週1回、会員各自が各クラスに足を運び、授業が始まる15分間の持ち時間で一押しの本を読んで聞かせる。
舟形小は現在、1〜6学年まで8クラスあり、8人の会員が当日朝に登校する必要がある。会長の阿部弘明さん(63)は「各自の都合があり、スケジュールを調整するのはそう楽でなかった。でも今は(無料通信アプリ)LINE(ライン)を使って、みんなに呼び掛けるだけで人が見つかる。便利になった」と笑う。
クラスごとの読み聞かせを終えた会員たちは図書館に集まり、子どもたちの反応などについて言葉を交わす。「こんなふうに読んで聞かせたらどうだろうか」。次回に向けて児童の興味や関心をさらに引き出そうと助言し合う。その姿から、本人たちも十分に楽しんでいることが伝わってくる。
2005年に産声を上げた同協議会は、学校と地域を結ぶ役割を果たす一方で、人気の絵本作家を招いた講演会を継続して開催。町内に限らず、本好きの人たちのネットワークづくりも後押ししている。地域ですっかり定着した活動は、新たな担い手育成にもつながっている。地元の高校生ボランティアが母校で読み聞かせをすることもあり、関係者を喜ばせている。阿部さんは「子どもたちが成長し、保護者となり、読み聞かせ活動に関わってくれる人が出てくれたらうれしい」と笑顔を見せた。